端唄俗曲選集(2)

端唄俗曲選集(2)

「青柳」

一、青柳の 
  陰に誰やら 居るわいな
  人じゃござんせぬ
  おぼろ月夜の エー影法師

二、春の夜に
  雪がちらちら 降るわいな
  雪じゃござんせぬ
  あれはお庭の エーこぼれ梅

 

「秋の夜」

秋の夜は
長いものとは まんまるな
月見ぬ人の 心かも
更けて待てども 来ぬ人の
おとづるものは 鐘ばかり
かぞうる指も 寝つ起きつ
わしゃ照らされて いるわいな

 

「宇治茶」

宇治は茶どころ さまざまに
中に噂の 大吉山と
人の気に合う 水に合う
色も香もある 好いた同志
粋な浮世に 野暮らしい
ンこちゃ ンこちゃ こちゃ
濃茶の 仲じゃもの

大吉山:大阪屋吉兵衛の店から売り出された茶の銘柄
濃茶(深い)の仲ならば色も香も良いと、男女の相性をその「大吉山」にかけて唄ったもの

 

「梅は咲いたか」

一、梅は咲いたか 桜はまだかいな
  柳ゃなよなよ 風次第
  山吹ゃ浮気で
  色ばっかりションガイナ

二、あさり取れたか
  はまぐりゃまだかいな
  あわびくよくよ 片思い
  さざえは悋気で 
  角ばっかりションガイナ

三、柳橋から 小舟で急がせる
  舟はゆらゆら 波次第
  舟から上がって 土手八丁
  吉原へご案内

 

「お伊勢参り」

一、お伊勢参りに
  石部の茶屋で あったとさ
  可愛い長右衛門さんの
  岩田帯しめたとさ
  エッササの エッササの
  エッササのサ

二、雪のあしたの
  入谷の寮で あったとさ
  可愛い直はんの
  膝にもたれてないたとさ
  風に鳴呼の 音高く

三、振り袖姿で
  ゆすりに来たが バレたとさ
  腕に桜の ほりものが見えたとさ
  弁天小僧菊之助

岩田帯:妊婦が胎児の保護のため妊娠五ヶ月頃から腹に巻く帯
鳴呼:小さな竹筒を板にならべたものを縄で張り、引けば管が板に触れ音を発する田畑を荒らす鳥などを脅すもの
弁天小僧菊之助:河竹黙阿弥作「青砥稿花紅彩画」の中の人物
いわゆる白浪五人男の一人
女装でゆすり、たかりなど数々の悪事の末、極楽寺山で立腹切る

 

「乙にからんだ」

一、乙にからんだ 垣根のへちま
  ぶらりと下がった
  ン程のよさかネカネ

二、鳥屋の娘に 言付け頼む
  話す話しも
  ン鳩や鷺かネカネ

三、主の心は 蒸気の煙
  遠くなるほど
  ン薄くなるかネカネ

四、往復ハガキで 返事を聞けば
  仲を切るよな
  ンこのしまつかネカネ

五、米の相場も 平気の二人
  ままごとみたよな
  ン新所帯かネカネ

:いい意味での予想外を表す江戸ことば

 

「香に迷う(御所車)」

香に迷う 梅が軒端に 匂い鳥
花に逢う瀬を 待つとせの
あけて嬉しき 懸想文
開く初音の はずかしく
まだとけかぬる 薄氷
雪に思いの 深草の
百夜も通う 恋の闇
君が情けを 仮寝の床の
枕かたしく 夜もすがら

軒端:軒のはし、軒に近いところ
懸想文:恋文
百代:多くの夜
夜もすがら:日暮れから夜明けまで一晩中・夜通し

 

「かんちろりん(下に居ろ)

一、控えろ 
  控えろと あの制止声はサ
  お江戸でサ カンチロリン
  武蔵でサ お江戸でサ
  大久保彦左衛門の 登城登城

二、下にろ 
  下にろと あの行列はサ
  大阪でサ カンチロリン
  大阪でサ 浪速でサ
  木村長門守の 上使上使

三、鐘が鳴る
  鐘が鳴る あの鳴る鐘はサ
  お江戸でサ カンチロリン
  お江戸でサ 泉岳寺
  四十と七士の 供養の鐘

大久保彦左衛門:大久保忠教(ただたか)の通称、江戸前期の幕臣 家康に仕えて戦功あり
登城:城に参上すること
上使:江戸幕府から諸大名などに上意(将軍の命令)を伝えるため派遣した使者
四十七士:赤穂義士 泉岳寺に墓がある

 

「紀伊の国」

紀伊の国は 音無川の水上に
立たせ給うは 船玉山
船玉十二社 大明神
さて東国に 至りては
玉姫稲荷が 三囲え
狐の嫁入り お荷物を
かつぐは合力 稲荷さま
頼めば田町の 袖摺りも
さしずめ今宵は 待女郎
コンコンチキナ コンチキナ
仲人は真っ先 真っ黒黒な九郎助
稲荷につままれて
子までなしたる 信田妻

待女郎:婚礼の際戸口に立って新婦の到着を待ち、手を取って家に導き入れ、また付き添って世話をする女
信田妻:葛の葉の子別れ(本名題:芦屋道満大内鑑・あしやどうまんおおうちかがみ)
信田の森の白狐が葛の葉に化けて安部保名と結婚して妻となり子供を産むが、後に本当の葛の葉が保名のもとに現れ白狐が姿を消すという物語

 

「金時」

金時が 金時が
熊をふまえて まさかり持って
富士の裾野の 松林
義経弁慶 渡辺の綱
唐の大将 あやまらせ
神功皇后 武内の臣
いくさ人形 よしあしちまき
菖蒲刀や あやめ草

金時:源頼光の家来の四天王の一人である「坂田金時」の事
豪勇無双のシンボルで子供の時に足柄山で山姥に育てられ、熊と一緒に遊んだという事などから端午の節句の飾り物になった
渡辺の綱:頼光の家来、四天王の一人
:中国の古称
神功皇后:仲哀天皇の皇后
武内の臣(宿禰):仲哀天皇に従って熊襲を征し、天皇の崩後、神功皇后を助けて新羅に遠征な様々な偉功があった人物
菖蒲刀:菖蒲の葉を束ねて作った刀五月五日の端午の童が腰にさした

 

「こうもり」

こうもりが 
出てきた浜の 夕涼み
川風さっと 吹く牡丹
荒い仕掛けの 色男
いなさぬ いなさぬ いつまでも
浪速の水に うつす姿エ

こうもり:市川家の替え紋のこと
     ここでは市川団十郎の事
いなさぬ:帰さぬ
牡丹:市川家の定紋
荒い仕掛け:市川流の荒事
荒事:歌舞伎で勇士・鬼神などを主役にした芝居、又その勇猛なしぐさ

 

「さいさい節」

一、梅と並んで むつまじそうにサ
  夫婦きどりで コラサノサ
  福寿草 サイサイ

二、よせばよかったに 舌切り雀サ
  チョイトなめたが コラサノサ
  身のつまり サイサイ

三、丸い玉子も 切りよで 四角サ
  ものも言いようで コラサノサ
  角が立つ サイサイ

四、雪をかぶって 寝ている竹をサ
  来ては雀が コラサノサ
  ゆり起こす サイサイ

 

「忍ぶ恋路」

忍ぶ恋路は さてはかなさよ
今度逢うのが 命がけ
よごす涙の おしろいも
その顔かくす 無理な酒

 

「芝で生まれて」

一、芝で生まれて 神田で育ち
  今じゃ火消しの アノ纏持ち

二、かねの中にも いらないかねは
  かねがね気兼ねに アノ明けの鐘

三、猫の子猫の 子猫の猫の
  猫の子猫の アノ三毛猫の子

四、今が今とて せくのじゃないが
  善は急げと アノ人が言う

 

「高砂」

高砂や この浦船に 帆をあげて
月もろ共に 出汐の
波の淡路の 島影や
遠く鳴尾の 沖すぎて
早や住之江に 着きにけり
早や住之江に 着きにけり

阿蘇の宮の神主友成が二人の神職を連れて都見物の途上播州高砂の浦に着き、高砂神社の境内にある松の下で落ち葉集めをする老夫婦に出会い松のいわれを聞くと夫妻は高砂の松の精で目出度い高砂の松の縁起を物語る高砂の松と住之江の松とは遠く海を隔てているが「相生の松(夫婦松)」と呼ばれ、互いに通う心遣いは「妹背の道(夫婦の仲)」と異ならず 何卒高砂の松をご覧あって後、住吉の松をご覧あれというと、老夫婦の姿はかき消す如く消え失せる友成等はこれを奇談と感じその夜月の出る満潮のころ、高砂の此の浦船に乗って右手に淡路島を見、左に兵庫県の鳴尾の沖を通って大阪湾の西岸の住吉の朝香潟に着き住吉大社に詣で住之江の松を拝んだというところを唄っている

 

「萩桔梗」

萩桔梗 中に玉章 しのばせて
月は野末に 草の露 
君を待つ虫 夜ごとにすだく
更けゆく鐘に 雁のこえ
恋はこうした ものかいな

玉章:玉梓(たまあずさ)の約 玉は美称 古代手紙を梓の木などに結びつけて使者が持参したことから・手紙、消息、ふみ・使い、使者
野末:野のすえ、野のはて
集く(すだく):あつまる、群がる

 

「春雨」

春雨に 
しっぽり濡るる うぐいすの
羽かぜに匂う 梅ケ香や
花にたわむれ しおらしや
小鳥でさえも 一筋に 
ねぐら定めぬ 気はひとつ
私ゃうぐいす 主は梅
やがて身まま 気ままになるならば
サァ鶯宿梅じゃ ないかいな
サァサなんでもよいわいな

鶯宿梅:梅の名木で香りの最も高きもの

 

「惚れて通う」

惚れて通うに 何こわかろう
今宵も逢おうと 闇の夜道を唯一人
先ゃさほどにも 思やせぬのに
こちゃめのぼりつめ
エー山を越えて 逢いに行く
どうした縁で 彼の人に
毎晩逢うたら 嬉しかろ
ササどうすりゃ 添われる
縁じゃやら じれったいね

 

「六段くずし」

一、さんさ時雨か 萱屋の雨か
  音もせずして 濡れかかる

二、潮来出島の 真菰の中で
  あやめ咲くとは しおらしや

三、仇やおろかで 逢われぬものか
  二町や三町の 道じゃない

六段:唄の終わりに箏曲の「六段の初段が使われている
萱屋:茅葺きの屋根 又その家
真菰:イネ科の多年草沼地に大群落をなして自生する

 

「我がもの」

我がものと
思えばかろき 傘の雪
恋の重荷を 肩にかけ
いもがり行けば 冬の夜の
川風寒く 千鳥鳴く
待つ身につらき 置きごたつ
じつにやる瀬が ないわいな

妹許(いもがり):親しい女(妻・恋人など)のもと・又、その女のいる所

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「青柳」

一、青柳の 陰に誰やら 居るわいな
  人じゃござんせぬ おぼろ月夜の エー影法師

二、春の夜に 雪がちらちら 降るわいな  
  雪じゃござんせぬ あれはお庭の エーこぼれ梅

 

「秋の夜」

秋の夜は 長いものとは まんまるな
月見ぬ人の 心かも 更けて待てども 来ぬ人の
おとづるものは 鐘ばかり かぞうる指も 寝つ起きつ
わしゃ照らされて いるわいな

 

「宇治茶」

宇治は茶どころ さまざまに
中に噂の 大吉山と 人の気に合う 水に合う
色も香もある 好いた同志 粋な浮世に 野暮らしい
ンこちゃ ンこちゃ こちゃ 濃茶の 仲じゃもの

大吉山:大阪屋吉兵衛の店から売り出された茶の銘柄
濃茶(深い)の仲ならば色も香も良いと、男女の相性をその「大吉山」にかけて唄ったもの

 

「梅は咲いたか」

一、梅は咲いたか 桜はまだかいな 柳ゃなよなよ 風次第
  山吹ゃ浮気で 色ばっかりションガイナ

二、あさり取れたか はまぐりゃまだかいな あわびくよくよ 片思い
  さざえは悋気で 角ばっかりションガイナ

三、柳橋から 小舟で急がせる 舟はゆらゆら 波次第
  舟から上がって 土手八丁 吉原へご案内

 

「お伊勢参り」

一、お伊勢参りに 石部の茶屋で あったとさ
  可愛い長右衛門さんの 岩田帯しめたとさ エッササの エッササの エッササのサ

二、雪のあしたの 入谷の寮で あったとさ
  可愛い直はんの 膝にもたれてないたとさ 風に鳴呼の 音高く

三、振り袖姿で ゆすりに来たが バレたとさ
  腕に桜の ほりものが見えたとさ 弁天小僧菊之助

岩田帯:妊婦が胎児の保護のため妊娠五ヶ月頃から腹に巻く帯
鳴呼:小さな竹筒を板にならべたものを縄で張り、引けば管が板に触れ音を発する 田畑を荒らす鳥などをおどすもの
弁天小僧菊之助:河竹黙阿弥作「青砥稿花紅彩画」の中の人物 いわゆる白浪五人男の一人
        女装でゆすり、たかりなど数々の悪事の末、極楽寺山で立腹を切る

 

「乙にからんだ」

一、乙にからんだ 垣根のへちま ぶらりと下がった ン程のよさかネカネ

二、鳥屋の娘に 言付け頼む 話す話しも ン鳩や鷺かネカネ

三、主の心は 蒸気の煙 遠くなるほど ン薄くなるかネカネ

四、往復ハガキで 返事を聞けば 仲を切るよな ンこのしまつかネカネ

五、米の相場も 平気の二人 ままごとみたよな ン新所帯かネカネ

乙:いい意味での予想外を表す江戸ことば

 

「香に迷う(御所車)」

香に迷う 梅が軒端に 匂い鳥
花に逢う瀬を 待つとせの あけて嬉しき 懸想文
開く初音の はずかしく まだとけかぬる 薄氷
雪に思いの 深草の 百夜も通う 恋の闇
君が情けを 仮寝の床の 枕かたしく 夜もすがら

軒端:軒のはし、軒に近いところ
懸想文:恋文
百代:多くの夜
夜もすがら:日暮れから夜明けまで、一晩中、夜通し

 

「かんちろりん(下に居ろ)」

一、控えろ 控えろと あの制止声はサ お江戸でサ カンチロリン
  武蔵でサ お江戸でサ 大久保彦左衛門の 登城登城

二、下にろ 下にろと あの行列はサ 大阪でサ カンチロリン
  大阪でサ 浪速でサ 木村長門守の 上使上使

三、鐘が鳴る鐘が鳴る あの鳴る鐘はサ お江戸でサ カンチロリン
  お江戸でサ 泉岳寺 四十と七士の 供養の鐘

大久保彦左衛門:大久保忠教(ただたか)の通称、江戸前期の幕臣家康に仕えて戦功あり
登城:城に参上すること
上使:江戸幕府から諸大名などに上意(将軍の命令)を伝えるため派遣した使者
四十七士:赤穂義士 泉岳寺に墓がある

 

「紀伊の国」

紀伊の国は 音無川の水上に 
立たせ給うは 船玉山 船玉十二社 大明神
さて東国に 至りては 玉姫稲荷が 三囲え
狐の嫁入り お荷物を かつぐは合力 稲荷さま
頼めば田町の 袖摺りも さしずめ今宵は 待女郎
コンコンチキナ コンチキナ 仲人は真っ先 真っ黒黒な九郎助
稲荷につままれて 子までなしたる信田妻

待女郎:婚礼の際戸口に立って新婦の到着を待ち、手を取って家に導き入れ、また付き添って世話をする女
信田妻:葛の葉の子別れ(本名題:芦屋道満大内鑑・あしやどうまんおおうちかがみ)
    信田の森の白狐が葛の葉に化けて安部保名と結婚して妻となり子供を産むが、後に本当の葛の葉が保名のもとに現れ白狐が姿を消すという物語

 

「金時」

金時が 金時が 熊をふまえて まさかり持って
富士の裾野の 松林 義経弁慶 渡辺の綱
唐の大将 あやまらせ 神功皇后 武内の臣
いくさ人形 よしあしちまき 菖蒲刀や あやめ草

金時:源頼光の家来の四天王の一人である「坂田金時」の事 豪勇無双のシンボルで子供の時に足柄山で山姥に育てられ、
   熊と一緒に遊んだという事などから端午の節句の飾り物になった
渡辺の綱:頼光の家来、四天王の一人
唐:中国の古称
神功皇后:仲哀天皇の皇后
武内の臣(宿禰):仲哀天皇に従って熊襲を征し、天皇の崩後、神功皇后を助けて新羅に遠征など様々な偉功があった人物
菖蒲刀:菖蒲の葉を束ねて作った刀 五月五日の端午の童が腰にさした

 

「こうもり」

こうもりが 出てきた浜の 夕涼み
川風さっと 吹く牡丹 荒い仕掛けの 色男
いなさぬ いなさぬ いつまでも 浪速の水に うつす姿エ

こうもり:市川家の替え紋のことで、ここでは市川団十郎の事をさしている
いなさぬ:帰さぬ
牡丹:市川家の定紋
荒い仕掛け:市川流の荒事
荒事:歌舞伎で勇士・鬼神などを主役にした芝居、又その勇猛なしぐさ

 

「さいさい節」

一、梅と並んで むつまじそうにさ
  夫婦きどりで コラサノサ 福寿草 サイサイ

二、よせばよかったに 舌切り雀サ
  チョイトなめたが コラサノサ 身のつまり サイサイ

三、丸い玉子も 切りよで 四角サ
  ものも言いようで コラサノサ 角が立つ サイサイ

四、雪をかぶって 寝ている竹をサ
  来ては雀が コラサノサ ゆり起こす サイサイ

 

「忍ぶ恋路」

忍ぶ恋路は さてはかなさよ 今度逢うのが 命がけ
よごす涙の おしろいも その顔かくす 無理な酒

 

「芝で生まれて」

一、芝で生まれて 神田で育ち 今じゃ火消しの アノ纏持ち

二、かねの中にも いらないかねは かねがね気兼ねに アノ明けの鐘

三、猫の子猫の 子猫の猫の 猫の子猫の アノ三毛猫の子

四、今が今とて せくのじゃないが 善は急げと アノ人が言う

 

「高砂」

高砂や この浦船に 帆をあげて
月もろ共に 出汐の 波の淡路の 島影や
遠く鳴尾の 沖すぎて 早や住之江に 着きにけり 早や住之江に 着きにけり

阿蘇の宮の神主友成が二人の神職を連れて都見物の途上播州高砂の浦に着き、高砂神社の境内にある松の下で落ち葉集めをする老夫婦に出会い松のいわれを聞くと夫妻は高砂の松の精で目出度い高砂の松の縁起を物語る
高砂の松と住之江の松とは遠く海を隔てているが「相生の松(夫婦松)」と呼ばれ、互いに通う心遣いは「妹背の道(夫婦の仲)」と異ならず 
何卒高砂の松をご覧あって後、住吉の松をご覧あれというと、老夫婦の姿はかき消す如く消え失せる
友成等はこれを奇談と感じその夜月の出る満潮のころ、高砂の此の浦船に乗って右手に淡路島を見、左に兵庫県の鳴尾の沖を通って大阪湾の西岸の住吉の朝香潟に着き
住吉大社に詣で住之江の松を拝んだというところを唄っている

 

「萩桔梗」

萩桔梗 中に玉章 しのばせて
月は野末に 草の露 君を待つ虫 夜ごとにすだく
更けゆく鐘に 雁のこえ 恋はこうした ものかいな

玉章:玉梓(たまあずさ)の約 玉は美称 古代手紙を梓の木などに結びつけて使者が持参したことから・手紙、消息、ふみ・使い、使者
野末:野のすえ、野のはて
集く(すだく):あつまる、群がる

 

「春雨」

春雨に しっぽり濡るる うぐいすの
羽かぜに匂う 梅ケ香や 花にたわむれ しおらしや
小鳥でさえも 一筋に ねぐら定めぬ 気はひとつ
私ゃうぐいす 主は梅 やがて身まま 気ままになるならば
サァ鶯宿梅じゃ ないかいな サァサなんでもよいわいな

鶯宿梅:梅の名木で香りの最も高きもの

 

「惚れて通う」

惚れて通うに 何こわかろう 今宵も逢おうと
闇の夜道を唯一人 先ゃさほどにも 思やせぬのに
こちゃめのぼりつめ エー山を越えて 逢いに行く
どうした縁で 彼の人に 毎晩逢うたら 嬉しかろ
ササどうすりゃ 添われる 縁じゃやら じれったいね

 

「六段くずし」

一、さんさ時雨か 萱屋の雨か 音もせずして 濡れかかる

二、潮来出島の 真菰の中で あやめ咲くとは しおらしや

三、仇やおろかで 逢われぬものか 二町や三町の 道じゃない

六段:唄の終わりに箏曲の「六段」の初段が使われている
萱屋:茅葺きの屋根 又その家
真菰:イネ科の多年草 沼地に大群落をなして自生する


「我がもの」

我がものと 思えばかろき 傘の雪
恋の重荷を 肩にかけ いもがり行けば 冬の夜の
川風寒く 千鳥鳴く 待つ身につらき 置きごたつ
じつにやる瀬が ないわいな

妹許(いもがり):親しい女(妻・恋人など)のもと 又、その女のいる所