端唄俗曲選集(1)

端唄俗曲選集(1)

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「有明の」

一、有明のともす油は 菜種なり 蝶がこがれて 逢いに来る  
  もとをただせば 深い仲 死ぬる覚悟で 来たわいな アーぜひとも ぜひとも

二、今朝も羽織の ほころびを わしに縫えとは 気が知れぬ
  いやな私に 縫わすより 好いたあの子に 頼まんせ アーぜひとも ぜひとも

有明:有明行燈 夜明けまでつけておく行燈 菜種油が燃料

 

「えんかいな」

一、夏の涼みは 両国の 出船入り船 屋形船  
  あがる流星 星下り 玉屋がとりもつ えんかいな

二、二人暑さを 川風に 流す浮き名の 涼み船
  合わす調子の 爪弾きは 水ももらさぬ えんかいな

夏の涼み:両国の花火を唄ったもの
流星、星下り:花火の名称
玉屋:「鍵屋」とならぶ花火屋の屋号

 

「お江戸日本橋」

一、お江戸日本橋 七つ立ち 初上り 行列揃えて アレワイサノサ
  コチャ 高輪夜明けの 提灯消す コチャエ コチャエ

二、お前待ち待ち 蚊帳の外 蚊に喰われ 七つの鐘の鳴るまでも
  コチャ 七つの鐘の鳴るまでも コチャエ コチャエ

三、お前待ち待ち 夕暮れに 格子先 十時の時計の鳴るまでも
  コチャ 十時の時計の鳴るまでも コチャエ コチャエ

四、お前はどんで 行燈で 若衆に 掻き立てられて とぼさたれた
  コチャ 若衆に 掻き立てられて とぼされた コチャエ コチャエ

五、お前は浜の お奉行様 潮風に 吹かれて お色がまっくろけ
  コチャ 吹かれて お色がまっくろけ コチャエ コチャエ

日本橋をば七つ立ち 
初上り:日本橋から京に上る道中を唄ったもの
七つ立ち:午前4時の鐘声と共に大名行列が出発すること
お前はどんで~:頭の回転が鈍いこと

 

「大津絵」

大阪を立ち退いて 私の姿が目にたたば 借りかごに身をやつし
奈良の旅籠屋 三輪の茶屋 五日三日と日を送り
二十日余りに四十両 使い果たして二分残る
金より大事な忠兵衛さん 科人にならしゃんしたも みんな私ゆえ
さぞやお腹も立ちましょうが 因縁づくじゃとあきらめ下しゃんせ

大阪を立ち退いて:芝居、梅川忠兵衛の新口村の場面を唄ったもの
         大阪新町の見世女郎、梅川が三百両の封印を切って罪人となった忠兵衛と共に
         新口村に逃れるまでの義太夫の口説きをこの唄にしたもの
科人(とがにん):罪を犯した人
旅籠屋(はたごや):宿屋、旅館

 

「からかさ」

一、から傘の 骨はばらばら 紙ゃやぶれても 離れ 離れまいぞえ 千鳥がけ

二、三味線の 糸は切れても 二人が仲は 切れて 切れて切れない あの深い仲

三、置き炬燵 待てど来ぬ夜の 切なさつらさ 積もる 積もる想いの 窓の雪

四、巻きたばこ 体まかせて 口まですわせ 灰に 灰になるまで 主のそば

千鳥がけ:唐傘のろくろに集まる骨を斜左右からかがった糸をいう

 

「ギッチョンチョン」

一、高い山から 谷底見れば ギッチョンチョン ギッチョンチョン 瓜やなすびの 花盛り
  ※オヤマカドッコイ ドッコイドッコイ ヨーイヤナ ギッチョンチョン ギッチョンチョン

二、お前一人と 定めておいて ギッチョンチョン ギッチョンチョン 浮気ゃその日の 出来心 ※

三、丸い玉子も 切りよで四角 ギッチョンチョン ギッチョンチョン ものも言いよで 角が立つ ※

 

「木遣りくずし」

一、サー格子造りに 御神燈下げて  兄貴ゃ家かと 姉御に問えば
  兄貴ゃ二階で 木遣りの稽古  音頭とるのは アリャうちの人
  ※エンヤラネ サノヨイサ エンヤラネ  エンヤラヤレコノセ サノセ アレワサ エンヤラネ

二、サーつねりゃ紫 食いつきゃ紅よ  色で仕上げた アリャこの体 ※

三、サー君は小鼓 調べの絃よ  締めつ緩めつ 本音を出して ※

四、サー目出度目出度の 若松様よ 枝も栄えて アリャ葉も繁る ※

御神燈:職人等が縁起をかついで家の戸口につるした提灯
兄貴・姉御:鳶の頭夫婦の敬称

 

「御所のお庭」

一、御所のお庭に 右近の橘 左近のささささ ふくふくララララ
  右大臣 左大臣 サササ緋の袴はいたり 官女官女 達々

二、雪はちらちら 子供は喜ぶ 大人はかじける 犬奴が飛び上がる
  雪をこかして サササほうきで掃くやら 屋根の雪ゃ 竿でかく

三月の節句の雛飾りを唄ったもの
当時としては夢の様な京都御所のお庭をかたどり、紫宸殿(しいでん)の御階(みはし)の左右にある
右近の橘と左近の桜とを配し右大臣、左大臣、官女をはべらせた豪華な風俗が綴られている

 

「さのさ節」

一、花づくし 山茶花 桜か 水仙か 寒に咲くのは 梅の花
  ぼたん しゃくやくネェ 百合の花 おもとの事なら 南天 菊の花 ハサノサ

二、情けなや これが浮世か 知らねども 同じ都に 住みながら  
  一つの月をネェ 西東 離れて暮らすも 今しばし ハサノサ

三、月づくし 三笠の山では 春の月 四条河原の 夏の月
  石山寺のネェ 秋の月 田毎 更科 冬の月 ハサノサ

 

「東雲節」

一、何をくよくよ川端柳 こがるるなんとしょ 水の流れを見て暮らす 東雲のストライキ
  さりとはつらいネ てなことおっしゃいましたかネ

二、自由廃業で廓は出たが こがるるなんとしょ 行き場がないのでくずひろい 東雲のストライキ
  さりとはつらいネ てなことおっしゃいましたかネ

三、汽車は出て行く煙は残る こがるるなんとしょ 残る煙が癪の種 新橋のステンショで
  別れがつらいネ てなことおっしゃいましたかね

四、どんどどんどと流れる水は こがるるなんとしょ 何処のいずくで止まるやら 東雲のストライキ
  さりとはつらいネ てなことおっしゃいましたかネ

横江鉄石・作詞、不知山人・作曲の流行り唄で、原名は「ストライキ節」
当時の世情は自由解放の声が高く、救世軍が機関誌「ときのこえ」で娼妓の自由廃業を進め、
熊本二本松遊廓の東雲桜と名古屋の旭新地の東雲桜の娼妓が自廃運動を起こした事を取り上げました。
一番の歌詞は川端の柳が毎日水を見て暮らしているように、娼妓が毎日桜主の圧制の下に無意味な生活を続けているという意味

 

「館山節」

浮世離れて 奥山住まい 恋も悋気も 忘れていたが鹿の泣く声
聞けば昔が 恋しゅうてならぬ あの山越えて 逢いに来る

浮世:この世の中、世間、人生
奥山:人里離れた奥深い山
悋気:嫉妬、やきもち

 

「棚のだるま」

一、あまり辛気くささに 棚のだるまさんを チョイトおろし
  鉢巻きさせたり ママ転がしてもみたり

二、あまり辛気くささに けしのだるまさんを チョイトおろし
  鉢巻きさせたり ママ吹き飛ばしてもみたり

三、あまり辛気くささに 棚の大だるまを チョイトおろし
  鉢巻きさせたり ママ蹴飛ばしてもみたり

棚のだるま:縁起の為に棚の上に達磨を置くこと
辛気くさい:心が晴れず思うようにならないのをもどかしく思う事を意味し、男が訪ねて来ないのをじれったく思うことを唄っている

 

「づぼらん」

かかる所へ 葛西領なる 篠崎村の 弥陀堂の坊様は 雨降りあげくに 修業と出かけ
右手に数珠持ち 左の方には大きな木魚 横ったにかかげて 南無からたんのぅ とらやぁやぁ
俺が嬶は づぼらんだよ 隣のかみさん これもんじゃ
何のかんのと 修業はよけれど 遙か向こうから 十六、七なる 姉さんなんぞを チョイト又見初めた
アア アア アア ンセノヨイヨイヨイ ヨイトコナよっぽど女にゃ ンのら和尚 おもしろや

づぼらん:孕んだ、妊娠
これもん:この曲では多情な女のこと

 

「都々逸」

一、うさぎのお目めは 何故こう赤い 夕べ寝不足 逢い不足 オヤ ハ コリャコリャ

二、まるめて投げ込む 紙くずかごは 愚痴やのろけの すて所

三、門に立てたる 女松に雄松 仲をもりもつ 注連飾り

四、待つ身になっても つらかろけれど 待たせて行かれぬ 身もつらい

「都々逸」は俗曲の王座を占める唄で、曲は本調子で七、七、七、五、の四句二十六文字を本格としています

 

「なすとかぼちゃ」

背戸のナ段畑で 茄子と南瓜の 喧嘩がござる
南瓜もとより いたずらものだよ 長い手を出し 茄子の木に からみつく
そこで茄子めが 黒くなって腹立ち 
そこへ夕顔 仲裁に入り コレサ待て待て 待て待て南瓜
色が黒いとて 背が低いとて 茄子の木は 地主だよ 俺やそなたは 店仮り身分
ひとの地面へ 入るのが無理じゃ無理じゃ
ソレ奥州街道で 南瓜の蔓めが 垣根をこわして 大工が喜ぶ
大家が腹立つ 十日の手間取り ドウスルドウスル ンおもしろや

 

「二上り新内」

悪止めせずとも そこはなせ 明日の月日が ないじゃなし
止めるそなたの 心より 帰るこの身が マどんなにつらかろう

 

「初出見よとて」

初出見よとて 出をかけてンまず 頭取りの 伊達姿 良い道具持ち 粋なポンプ組
エーずんと立てたる 梯子乗り 腹亀じゃ ン吹き流し 逆さ大の字 ぶらぶら 谷のぞき

初出:正月4日の出初め式の事
頭取り:かしら
伊達姿:いきな姿
良い道具持ち:良いまといもち
腹亀じゃ~谷のぞき:梯子乗り技

 

「深川節」

一、猪牙でサッサ行くのは 深川通い サテ あがる桟橋のアレワイサノサ いそいそと
  客の心は 上の空 飛んで行きたいアレワイサノサ 主のそば

二、駕籠でサッサ行くのは 吉原通い サテ 降りる衣紋坂アレワイサノサ いそいそと
  大門口を 眺むれば 深いなじみがアレワイサノサ お楽しみ

三、坊様ハイハイ二人で 葭町通い サテ あがる段梯子アレワイサノサ いそいそと
  隣り座敷を 眺むれば 差いつ押さえつアレワイサノサ きつね拳

猪牙:イノシシの牙の様な形の舟のことで、船足が速くもっぱら遊里行きに利用された
衣紋坂:吉原の入り口の坂
きつね拳:二人相対し両手を開いて、両耳の辺りに拳げるのを狐、膝の上に両手を置くのを庄屋、左手の拳を握って前に出すのを鉄砲といい
     狐は庄屋に勝ち、庄屋は鉄砲に勝ち、鉄砲は狐に勝という、現在のジャンケンみたいなもの

 

「奴さん」

一、ハァコリャコリャ エー奴さん どちら行く ハァコリャコリャ
  旦那お迎えに さても寒いのに共揃い 雪のせ降る夜も 風の夜も
  ンサテ お供はつらいネ いつも奴さんは 高ばしょり
  アリャセ コリャサ それもそうかいなエ

二、ハァマダマダ エー姐さん ほんかいな ハァコリャコリャ
  衣々の 言葉も交わせさず 明日の夜は 裏のせ窓には 私一人
  ンサテ 合図は良いか 首尾をようして 逢いに来たわいな
  アリャセ コリャサ それもそうかいなエ

奴さん:藩邸の仲間(ちゅうげん)、供奴
藩邸:藩主の邸宅
仲間:武士に付き従う雑卒・武家の日使・侍と小者との中間に位する
共揃い:大勢の仲間が殿の警固の行列をすること
高ばしょり:裾を高くはしょって、空脛を出す風俗
衣々(きぬぎぬ):共寝した男女が翌朝各自の着物を着て別れること、又その朝・暁の別れ
首尾:物事のなりゆき・事の顛末・結果

「有明の」

一、有明のともす油は 菜種なり
  蝶がこがれて 逢いに来る
  もとをただせば 深い仲
  死ぬる覚悟で 来たわいな
  アーぜひとも ぜひとも

二、今朝も羽織の ほころびを
  わしに縫えとは 気が知れぬ
  いやな私に 縫わすより
  好いたあの子に 頼まんせ
  アーぜひとも ぜひとも

有明:有明行燈
夜明けまでつけておく行燈菜種油が燃料

 

「えんかいな」

一、夏の涼みは 両国の
  出船入り船 屋形船
  あがる流星 星下り
  玉屋がとりもつ えんかいな

二、二人暑さを 川風に
  流す浮き名の 涼み船
  合わす調子の 爪弾きは
  水ももらさぬ えんかいな

夏の涼み:両国の花火を唄ったもの
流星、星下り:花火の名称
玉屋:「鍵屋」とならぶ花火屋の屋号

 

「お江戸日本橋」

一、お江戸日本橋 七つ立ち
  初上り 行列揃えて アレワイサノサ
  コチャ 高輪夜明けの 提灯消す
  コチャエ コチャエ

二、お前待ち待ち 蚊帳の外
  蚊に喰われ 七つの鐘の鳴るまでも

三、お前待ち待ち 夕暮れに 
  格子先 十時の時計の鳴るまでも

四、お前はどんで 行燈で 
  若衆に 掻き立てられて とぼさたれた

五、お前は浜の お奉行様
  潮風に 吹かれて お色がまっくろけ

日本橋をば七つ立ち
初上り:日本橋から京に上る道中を唄ったもの
七つ立ち:午前4時の鐘声と共に大名行列が出発すること
お前はどんで~:頭の回転が鈍いこと

 

「大津絵」

大阪を立ち退いて 私の姿が目にたたば
借りかごに身をやつし
奈良の旅籠屋 三輪の茶屋
五日三日と日を送り 二十日余りに四十両
使い果たして二分残る
金より大事な忠兵衛さん
科人にならしゃんしたも みんな私ゆえ
さぞやお腹も立ちましょうが
因縁づくじゃとあきらめ下しゃんせ

大阪を立ち退いて:芝居、梅川忠兵衛の新口村の場面を唄ったもの大阪新町の見世女郎、梅川が三百両の封印を切って罪人となった忠兵衛と共に新口村に逃れるまでの義太夫の口説きをこの唄にしたもの
科人(とがにん):罪を犯した人
旅籠屋(はたごや):宿屋、旅館

 

「からかさ」

一、から傘の 骨はばらばら
  紙ゃやぶれても 
  離れ 離れまいぞえ 千鳥がけ

二、三味線の 糸は切れても
  二人が仲は
  切れて 切れて切れない あの深い仲

三、置き炬燵 待てど来ぬ夜の
  切なさつらさ
  積もる 積もる想いの 窓の雪

四、巻きたばこ 体まかせて
  口まですわせ
  灰に 灰になるまで 主のそば

千鳥がけ:唐傘のろくろに集まる骨を斜左右からかがった糸をいう

 

「ギッチョンチョン」

一、高い山から 谷底見れば
  ギッチョンチョン ギッチョンチョン
  瓜やなすびの 花盛り
 ※オヤマカドッコイ ドッコイドッコイ
  ヨーイヤナ ギッチョンチョン
  ギッチョンチョン

二、お前一人と 定めておいて
  ギッチョンチョン ギッチョンチョン
  浮気ゃその日の 出来心 ※

三、丸い玉子も 切りよで四角
  ギッチョンチョン ギッチョンチョン
  ものも言いよで 角が立つ ※

 

「木遣りくずし」

一、サー格子造りに 御神燈下げて
  兄貴ゃ家かと 姉御に問えば
  兄貴ゃ二階で 木遣りの稽古
  音頭とるのは アリャうちの人
 ※エンヤラネ サノヨイサ エンヤラネ
  エンヤラヤレコノセ サノセ
  アレワサ エンヤラネ

二、サーつねりゃ紫 食いつきゃ紅よ
   色で仕上げた アリャこの体 ※

三、サー君は小鼓 調べの絃よ
   締めつ緩めつ 本音を出して ※

四、サー目出度目出度の 若松様よ
  枝も栄えて アリャ葉も繁る ※

御神燈:職人等が縁起をかついで家の戸口につるした提灯
兄貴・姉御:鳶の頭夫婦の敬称

 

「御所のお庭」

一、御所のお庭に 右近の橘 
  左近のささささ ふくふくララララ
  右大臣 左大臣 サササ緋の袴はいたり
  官女官女 達々

二、雪はちらちら 子供は喜ぶ
  大人はかじける 犬奴が飛び上がる
  雪をこかして サササほうきで掃くやら
  屋根の雪ゃ 竿でかく

三月の節句の雛飾りを唄ったもの 当時としては夢の様な京都御所のお庭をかたどり、紫宸殿(しいでん)の御階(みはし)の左右にある右近の橘と左近の桜とを配し、右大臣、左大臣、官女をはべらせた豪華な風俗が綴られている

 

「さのさ節」

一、花づくし 山茶花 桜か 水仙か
  寒に咲くのは 梅の花
  ぼたん しゃくやくネェ 百合の花
  おもとの事なら 南天菊の花 ハサノサ

二、情けなや これが浮世か 知らねども
  同じ都に 住みながら
  一つの月をネェ 西東
  離れて暮らすも 今しばし ハサノサ

三、月づくし 三笠の山では 春の月
  四条河原の 夏の月
  石山寺のネェ 秋の月
  田毎 更科 冬の月 ハサノサ

 

「東雲節」

一、何をくよくよ川端柳
  こがるるなんとしょ
  水の流れを見て暮らす
  東雲のストライキ さりとはつらいネ
  てなことおっしゃいましたかネ

二、自由廃業で廓は出たが
  こがるるなんとしょ
  行き場がないのでくずひろい
  東雲のストライキ さりとはつらいネ
  てなことおっしゃいましたかネ

三、汽車は出て行く煙は残る
  こがるるなんとしょ
  残る煙が癪の種 
  新橋のステンショで 別れがつらいネ
  てなことおっしゃいましたかね

四、どんどどんどと流れる水は
  こがるるなんとしょ
  何処のいずくで止まるやら
  東雲のストライキ さりとはつらいネ
  てなことおっしゃいましたかネ

横江鉄石・作詞、不知山人・作曲の流行り唄で、原名は「ストライキ節」当時の世情は自由解放の声が高く、救世軍が機関誌「ときのこえ」で娼妓の自由廃業を進め、熊本二本松遊廓の東雲桜と名古屋の旭新地の東雲桜の娼妓が自廃運動を起こした事を取り上げました。一番の歌詞は川端の柳が毎日水を見て暮らしているように、娼妓が毎日桜主の圧制の下に無意味な生活を続けているという意味

 

「館山節」

浮世離れて 奥山住まい
恋も悋気も 忘れていたが
鹿の泣く声 聞けば昔が
恋しゅうてならぬ あの山越えて
逢いに来る

浮世:この世の中、世間、人生
奥山:人里離れた奥深い山
悋気:嫉妬、やきもち

 

「棚のだるま」

一、あまり辛気くささに
  棚のだるまさんを チョイトおろし
  鉢巻きさせたり ママ転がしてもみたり

二、あまり辛気くささに
  けしのだるまさんを チョイトおろし
  鉢巻きさせたり 
  ママ吹き飛ばしてもみたり

三、あまり辛気くささに
  棚の大だるまを チョイトおろし
  鉢巻きさせたり
  ママ蹴飛ばしてもみたり

棚のだるま:縁起の為に棚の上に達磨を置くこと
辛気くさい:心が晴れず思うようにならないのをもどかしく思う事を意味し、男が訪ねて来ないのをじれったく思うこと

 

「づぼらん」

かかる所へ 葛西領なる 篠崎村の
弥陀堂の坊様は 雨降りあげくに
修業と出かけ 右手に数珠持ち
左の方には 大きな木魚
横ったにかかげて
南無からたんのぅ とらやぁやぁ
俺が嬶は づぼらんだよ 
隣のかみさん これもんじゃ
何のかんのと 修業はよけれど
遙か向こうから 十六、七なる
姉さんなんぞを チョイト又見初めた
アア アア アア ンセノヨイヨイヨイ
ヨイトコナ よっぽど女にゃ
ンのら和尚 おもしろや

づぼらん:孕んだ、妊娠
これもん:この曲では多情な女のこと

 

「都々逸」

一、うさぎのお目めは 何故こう赤い
  夕べ寝不足 逢い不足
  オヤ ハ コリャコリャ

二、まるめて投げ込む 紙くずかごは
  愚痴やのろけの すて所

三、門に立てたる 女松に雄松
  仲をもりもつ 注連飾り

四、待つ身になっても つらかろけれど
  待たせて行かれぬ 身もつらい

「都々逸」は俗曲の王座を占める唄で、曲は本調子で七、七、七、五、の四句二十六文字を本格としています

 

「なすとかぼちゃ」

背戸のナ段畑で
茄子と南瓜の 喧嘩がござる 
南瓜もとより いたずらものだよ 
長い手を出し 茄子の木に からみつく
そこで茄子めが 黒くなって腹立ち
そこへ夕顔 仲裁に入り
コレサ待て待て 待て待て南瓜
色が黒いとて 背が低いとて
茄子の木は 地主だよ
俺やそなたは 店仮り身分 
ひとの地面へ 入るのが無理じゃ無理じゃ
ソレ奥州街道で 南瓜の蔓めが
垣根をこわして 大工が喜ぶ 
大家が腹立つ 十日の手間取り
ドウスルドウスル ンおもしろや

 

「二上り新内」

悪止めせずとも そこはなせ
明日の月日が ないじゃなし
止めるそなたの 心より
帰るこの身が マどんなにつらかろう

 

「初出見よとて」

初出見よとて 出をかけてンまず
頭取りの 伊達姿 
良い道具持ち 粋なポンプ組
エーずんと立てたる 梯子乗り
腹亀じゃ ン吹き流し
逆さ大の字 ぶらぶら 谷のぞき

初出:正月4日の出初め式の事
頭取り:かしら
伊達姿:いきな姿
良い道具持ち:良いまといもち
腹亀じゃ~谷のぞき:梯子乗り技

 

「深川節」

一、猪牙でサッサ行くのは 深川通い
  サテ あがる桟橋の
  アレワイサノサ いそいそと
  客の心は 上の空
  飛んで行きたい アレワイサノサ
  主のそば

二、駕籠でサッサ行くのは 吉原通い
  サテ 降りる衣紋坂
  アレワイサノサ いそいそと
  大門口を 眺むれば
  深いなじみが アレワイサノサ
  お楽しみ

三、坊様ハイハイ二人で 葭町通い
  サテ あがる段梯子
  アレワイサノサ いそいそと
  隣り座敷を 眺むれば
  差いつ押さえつ アレワイサノサ
  きつね拳

猪牙:イノシシの牙の様な形の舟のことで、船足が速くもっぱら遊里行きに利用された
衣紋坂:吉原の入り口の坂
きつね拳:二人相対し両手を開いて、両耳の辺りに拳げるのを狐、膝の上に両手を置くのを庄屋、左手の拳を握って前に出すのを鉄砲といい、狐は庄屋に勝ち、庄屋は鉄砲に勝ち、鉄砲は狐に勝という、現在のジャンケンみたいなもの

 

「奴さん」

一、ハァコリャコリャ 
  エー奴さん どちら行く
  ハァコリャコリャ
  旦那お迎えに さても寒いのに共揃い
  雪のせ降る夜も 風の夜も
  ンサテ お供はつらいネ
  いつも奴さんは 高ばしょり
  アリャセ コリャサ
  それもそうかいなエ

二、ハァマダマダ
  エー姐さん ほんかいな
  ハァコリャコリャ
  衣々の 言葉も交わせさず 明日の夜は
  裏のせ窓には 私一人
  ンサテ 合図は良いか
  首尾をようして 逢いに来たわいな
  アリャセ コリャサ
  それもそうかいなエ

奴さん:藩邸の仲間(ちゅうげん)
藩邸:藩主の邸宅
仲間:武士に付き従う雑卒・武家の日使侍と小者との中間に位する
共揃い:大勢の仲間が殿の警固の行列をすること
高ばしょり:裾を高くはしょって空脛を出す風俗
衣々(きぬぎぬ):共寝した男女が翌朝各自の着物を着て別れること、又その朝・暁の別れ
首尾:物事のなりゆき・事の顛末・結果